こんにちは。
“美し国の行政書士”長谷川です。
外国人技能実習生を受け入れる企業が目指すべき「実習実施者の優良認定」。
今回は、その「実習実施者の優良認定」を受けるメリットと優良認定を受けるためにクリアしなければならない基準について説明します。
1. 実習実施者の優良認定とは
実習実施者の優良認定とは、外国人技能実習生を受け入れる実習実施者とその実習実施者が加入する監理団体が共に優良の要件を満たすことで第3号技能実習生の受け入れが可能となる仕組みです。
2. 優良認定を受けるメリット
優良認定を受けるメリットとしては、第3号技能実習生の受け入れが可能となることで実習期間を延長することができることと受入れ人数枠が拡大することが挙げられます。
2-1. 実習期間の延長
技能実習生の区分は、第1号から第3号まであり、技能実習生本人が所定の試験に合格することによってステップアップが可能です。
技能実習1号は、入国して1年目で「技能を修得」する実習を行うことができます。
技能実習2号は、2~3年目で「技能を習熟」する実習を行うことができます。
そして、4~5年目が技能実習3号で「技能を熟達」する実習を行うことができます。
技能実習3号に移行することにより実習期間が3年から最長5年に延長することが可能となります。
受入れ企業にとっては、実習期間を延長することで、実習生に熟達した技能を身に着けてもらうと共に、重要な戦力としての活躍を期待することができます。
そのためには、技能実習生本人が技能検定3級等(技能実習評価試験専門級)の実技試験に合格していることに加え、実習実施者及び監理団体が「優良」の認定を受けることが必要です。
2-2. 受け入れ人数枠の拡大
実習実施者及び監理団体が「優良」の認定を受けると、技能実習生を受け入れることができる基本人数枠が拡大され、より多くの実習生を受け入れることが可能となります。
基本人数枠 | 優良実習実施者 | ||||
第1号 | 第2号 | 第1号 | 第2号 | 第3号 | |
実習実施者の常勤職員の総数 | 実習生の人数 | 実習生の人数 | |||
301人以上 | 常勤職員の総数の1/20 | 基本人数枠の2倍 | 基本人数枠の2倍 | 基本人数枠の4倍 | 基本人数枠の6倍 |
201人以上300人以下 | 15人 | ||||
101人以上200人以下 | 10人 | ||||
51人以上100人以下 | 6人 | ||||
41人以上50人以下 | 5人 | ||||
31人以上40人以下 | 4人 | ||||
30人以下 | 3人 |
ただし、常勤職員数が3人以下の企業では、実習生の人数が常勤職員数を超えることはできません。
また、建設業においては、受け入れ可能な実習生の人数が実習実施者の常勤職員の人数以下でなければならないとされています。
介護分野でも受け入れ可能人数は、事業所単位で日本人等の人数以下とされています。
3. 優良認定を受けるには
優良認定を受けるためには、実習実施者である受入れ企業とその実習実施者が加入する監理団体が共に優良の認定基準を満たしている必要があります。
3-1. 受け入れ企業の認定基準
優良な実習実施者の基準については、技能等を習得させる能力につき高い水準を満たしていることが求められます。
次の事項を点数により総合的に評価し、一定の点数以上(150点満点で90点以上)を獲得した場合に「優良」であると判断されます。
1. 技能等の修得等に係る実績(70点満点)
- 過去3技能実習事業年度の基礎級程度の技能検定等の学科試験及び実技試験の合格率
- 過去3技能実習事業年度の2・3級程度の技能検定等の実技試験の合格率
- 直近過去3年間の2・3級程度の技能検定等の学科試験の合格実績
- 技能検定等の実施への協力
技能検定委員又は技能実習評価試験において技能検定委員に相当する者を社員等の中から輩出している場合や実技試験の実施に必要とされる機材・設備等の貸与を行っている場合に加点
※ 技能実習事業年度とは技能実習に関する事業年度で毎年4月1日から翌年3月31日までの期間をいいます。
2. 技能実習を行わせる体制(10点満点)
- 直近過去3年以内の技能実習指導員の「技能実習指導員講習」受講歴
- 直近過去3年以内の生活指導員の「生活指導員講習」受講歴
3. 技能実習生の待遇(10点満点)
- 第1号技能実習生の賃金(基本給)のうち最低のものと最低賃金の比較
- 技能実習生の賃金に係る技能実習の各段階ごとの昇給率
- 技能実習生の住環境の向上に向けた取組
4. 法令違反・問題の発生状況(5点満点)
- 直近過去3年以内に改善命令を受けたことがあること
- 直近過去3年以内における失踪がゼロ又は失踪の割合が低いこと
- 直近過去3年以内に攻めによるべき失踪があること
特に、直近過去3年以内に改善命令を受けたことがある場合や実習実施者の責めによる失踪があった場合は、大幅な減点となってしまいます。
5. 相談・支援体制(45点満点)
- 母国語相談・支援の実施方法・手順を定めたマニュアル等を策定し、関係職員に周知していること
- 受け入れた技能実習生について、すべての母国語で相談できる相談員を確保していること
- 直近過去3年以内に、技能実習の継続が困難となった技能実習生に引き続き技能実習を行う機会を与えるためにその技能実習生の受け入れを行ったこと
- 技能実習の継続が困難となった技能実習生(他の管理団体傘下の実習実施者で技能実習を行っていた者に限る。)に引き続き技能実習を行う機会を与えるため、実習先変更支援サイトに監理団体を通じて受け入れ可能人数の登録を行っていること
6. 地域社会との共生(10点満点)
- 受け入れた技能実習生に対し、日本語の学習の支援を行っていること
- 地域社会との交流を行う機会をアレンジしていること
- 日本の文化を学ぶ機会をアレンジしていること
参考:技能実習制度 運用要領(出入国在留管理庁・厚生労働省)
3-2. 監理団体の認定基準
優良な監理団体の基準については、技能実習の実施状況の監査その他の業務を遂行する能力につき高い水準を満たしていることが求められます。
次の事項を点数により総合的に評価し、一定の点数以上(150点満点で90点以上)を獲得した場合に「優良」であると判断されます。
1. 団体監理型技能実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制及び実施状況(50点満点)
- 監理団体が行う定期の監査について、その実施方法・手順を定めたマニュアル等を策定し、監査を担当する職員に周知していること
- 監理事業に関与する常勤の役職員と実習監理を行う実習実施者の比率
- 直近過去3年以内の監理責任者以外の監理団体の職員の講習受講歴
- 実習実施者の技能実施責任者、技能実習指導員、生活指導員に対し、毎年、研修の実施、マニュアルの配布などの支援を行っていること
- 帰国後の技能実習生のフォローアップ調査に協力すること
- 技能実習生のあっせんに関し、監理団体の役職員が送出国での事前面談をしていること
- 帰国後の技能実習生に関し、送出機関と連携して、就職先の把握を行っていること
2. 技能等の修得等に係る実績(40点満点)
- 過去3技能実習事業年度の基礎級程度の技能検定等の学科試験及び実技試験の合格率
- 過去3技能実習事業年度の2・3級程度の技能検定等の実技試験の合格率
- 直近過去3年間の2・3級程度の技能検定等の学科試験の合格実績
- 技能検定等の実施への協力
傘下の実習実施者が、技能検定委員又は技能実習評価試験において技能検定委員に相当する者を社員等の中から輩出している場合や実技試験の実施に必要とされる機材・設備等の貸与を行っている
3. 法令違反・問題の発生状況(5点満点)
- 直近過去3年以内に改善命令を受けたことがある
- 直近過去3年以内における失踪がゼロ又は失踪の割合が低いこと
- 直近過去3年以内に攻めによるべき失踪があること
- 直近過去3年以内に傘下の実習実施者に不正行為があること
こちらも、実習実施者と同様、直近過去3年以内に改善命令を受けたことがある場合や監理団体の責めによる失踪があった場合は、大幅な減点となってしまいます。
4. 相談・支援体制(45点満点)
- 機構・監理団体が実施する母国語相談・支援の実施方法・手順を定めたマニュアル等を策定し、関係職員に周知していること
- 技能実習の継続が困難となった技能実習生(他の監理団体傘下の実習実施者で技能実習を行っていた者に限る。)に引き続き技能実習を行う機会を与えるための受け入れに協力する旨の機構への登録を行っていること
- 技能実習の継続が困難となった技能実習生(他の監理団体傘下の実習実施者で技能実習を行っていた者に限る。)に引き続き技能実習を行う機会を与えるために、その技能実習生の受け入れを行ったこと
- 技能実習生の住環境の向上に向けた取組 ① 入国後講習時の宿泊施設 ② 実習時の宿泊施設
5. 地域社会との共生(10点満点)
- 受け入れた技能実習生に対し、日本語の学習の支援を行っている実習実施者を支援していること
- 地域社会との交流を行う機会をアレンジしている実習実施者を支援していること
- 日本の文化を学ぶ機会をアレンジしている実習実施者を支援していること
参考:技能実習制度 運用要領(出入国在留管理庁・厚生労働省)
4. 優良認定の手続き
優良実習実施者になるためには、外国人技能実習機構に「優良要件適合申請書」を提出し、「優良実習実施者」としての認定を受ける必要があります。
5. まとめ
実習実施者が優良認定を受けるメリットと優良認定の基準について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
外国人技能実習制度は、開発途上国の外国人に日本の技術・技能や知識を学ばせ、その習得した技能等を開発途上地域の発展に生かしてもらうことを目的とした国際貢献のための制度です。
しかし、技能実習生を受け入れるために受入れ企業は、少なからず費用をかけているので、実習生には少しでも早く技能を修得してもらい、少しでも長く戦力として活躍してもらいたいですよね。
そのためにも、優良認定を受けて、実習期間を延長するメリットは大きいと思います。
ということで、今回はこの辺で
では、また。 See you.
コメント