相続・遺言

相続土地国庫帰属制度について

相続・遺言

こんにちは。

“美し国の行政書士”長谷川です。

ここのところ毎日はっきりしない天気というか、梅雨らしい天気が続いてます。

こんなときはいつも悩んでしまいます。洗濯物を外に干すべきか、中に干すべきか・・・

ということで、今回は「相続土地国庫帰属制度」についてのお話です。

1. 相続土地国庫帰属制度とは

東日本大震災のときに、所有者不明の土地が多かったので用地買収ができずに復興事業が遅れたという経緯がありました。そして、そういった所有者不明土地の発生を抑制するためにできた制度の一つが「相続土地国庫帰属制度」です。

所有者不明土地が発生する原因としては、主に相続があった場合や所有者が住所変更した場合の登記申請が任意であったため、相続登記や住所等の変更登記をしなくても何のお咎めもなかったことが挙げられます。

そのため、相続登記については、令和6年4月からは申請が義務付けられることとなります。その時点で相続登記や住所変更されていない土地についても対象になります。

「相続土地国庫帰属制度」は、土地を相続したものの使い道がない。管理費用の負担が大きいので手放してしまいたいけど引き取ってくれるところがない。処分に困っている。そんな将来的に所有者不明土地になりそうな土地を手放して国に引き取ってもらう制度です。

2. 申請者の要件

申請者となれるのは、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地の所有権を取得した相続人です。

その土地は、申請者の単独所有であっても共有であっても構いません。

ただし、共有の場合は共有者全員で申請する必要がありますが、共有者の全員が相続又は遺贈により持分を取得している必要はありません。共有者の中に相続又は遺贈によって持分を取得した相続人が要れば、法人であっても申請することができます。

3. 相続登記されていない土地

相続登記されている場合は、申請者と土地の所有者が一致していることを登記事項証明書又は登記簿謄本で確認することができます。

それでは、相続登記されていない場合はどうかというと、申請者が申請する土地を相続又は遺贈によって取得したのであれば、申請することができます。

ただし、この場合、申請者が相続又は遺贈によって取得したことを証明する書類が必要になります。

4. 引き取ってもらえない土地

「相続土地国庫帰属制度」は、不要な土地を引き取ってもらえる制度だからといってどんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。

「相続土地国庫帰属制度」では、「申請ができない土地」と「帰属の承認ができない土地」を定めており、これらに該当する土地は引き取ってもらえません。逆にこれらに該当する土地でなければ、国は引き取らなければならないことになっています。

4-1. 申請ができない土地

申請の書面調査の段階で却下されてしまう土地として五つ挙げられています。

  1. 建物が建っている土地
  2. 抵当権等の担保権や地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている土地
  3. 通路など土地の所有者以外の者により使用されており、今後も使用が予定される土地が含まれる土地
  4. 特定有害物質により土壌が汚染されている土地
  5. 隣接する土地との境界が明らかでない土地その他土地の所有権、範囲について争いがある土地

これらに該当すると直ちに却下されてしまいます。

申請に当たっては、土地一筆当たり14,000円の審査手数料が必要となりますが、却下となった場合でも手数料は帰ってきませんので注意が必要です。

4-2. 帰属の承認ができない土地

申請がされると書面調査と実地調査で審査が行われますが、その審査の段階で申請土地が、次に該当すると判断された場合は不承認とされてしまいます。

  1. 崖がある土地で、住民や隣地へ被害を及ぼす可能性があり、その管理に過分の費用又は労力を要する場合
  2. 工作物、車両又は樹木その他の有体物があり、かつその有体物が土地の通常の管理又は処分を阻害する場合
  3. 除去しなければ土地の通常の管理又は処分することができない有体物が地下に存する土地
  4. 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理又は処分できない土地として以下のもの
  • 民法上の通行権が現に妨害されている「他の土地に囲まれて行動に通じない土地(袋地)」「「沼、河川、海、水路を通らなければ公道に出ることができない土地」「崖があって土地と公道とに著しい高低差がある土地」
  • 所有者以外の第三者によって、所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地

5. 通常の管理又は処分をするに当たり過分に費用又は労力を要する以下の土地

  • 災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止させるための措置が必要な土地
  • 土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地
  • 国による整備(造林、間伐、保育)が必要な森林(山林)
  • 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令に基づき負担する土地
  • 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定の基づき申請者の金銭債務を国が承継する土地

これらに該当すると申請が不承認となります。

5. 負担金

審査が終了すると承認又は不承認の結果が申請者に送付されます。

申請承認となった場合は、「宅地」「農地」「森林」「その他」の土地の区分に応じた所定の負担金を納めることになります。

負担金の額は、10年分の標準的な土地の管理費用を考慮して計算されており、「宅地」「農地」はその面積にかかわらず、原則20万円、「その他」(雑種地や原野等)も面積にかかわらず20万円です。

「宅地」及び「農地」の例外に該当する土地や「森林」の場合は、それぞれの面積区分に応じて算出した金額が負担金となります。

「宅地」の例外としては、都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の宅地があります。

「農地」の例外としては、主に農用地として利用されている土地で次に該当する農地があります。

  • 都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の農地
  • 農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内の農地
  • 土地改良事業等の施行区域内の農地

負担金は、その通知が到達した日の翌日から30日以内に納めなければなりません。

納付期限を経過してしまうと、承認の効力を失ってしまいます。

「よく考えたら、土地を手放すのを止める」という場合は、負担金を納付しなければ失効します。

6. 国庫帰属

申請が承認され、負担金が納付されるとその時点で申請した土地の所有権が国に移転することになります。

所有権の移転登記は国がやってくれますし、相続登記や住所変更登記がされていない土地についても国が代わりにやってくれるので安心です。

以上で手続き完了です。

7. まとめ

申請先は、その土地の所在する法務局となりますので、引き取ってもらえる土地に該当するかどうかの判断が難しい場合などは法務局で相談することができます。

また、申請できるのは申請者本人又は法定代理人に限られますが、弁護士、司法書士、行政書士は申請者本人に代わって、申請書の作成、提出をすることができますので困ったときはご利用ください。

ということで、今回はこの辺で

では、また。 See you.

 

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