こんにちは。
“美し国の行政書士”長谷川です。
建設事業者の中には、元請業者や上位の下請業者から作業員名簿や再下請負通知書の作成・提出を求められたことがある方も多いと思います。
今回は、そんな作業員名簿や再下請負通知書の作成の根拠となる施工体制台帳について、その作成の対象となる工事、台帳の記載内容や添付書類などを解説します。
1. 施工体制台帳とは
施工体制台帳とは、建設工事の元請業者に現場の施工体制を把握させ、品質・工程・安全などの施工に関するトラブルの発生や建設業法違反、不良不適格業者の参入、安易な重層下請を防止するため、一定の建設工事を施工する場合に作成が義務付けられている台帳です。
2. 作成が必要な場合
「建設業法」では、建設業者が発注者から直接請負った建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の合計額が4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上になる場合は、公共工事・民間工事を問わず施工体制台帳の作成し、請け負った建設工事の目的物が発注者に引き渡されるまでの期間、現場に備えておくことが必要です。
下請負代金の合計額が4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の工事であることから対象となるのは特定建設業者ということになります。
また、「入札契約適正化法」では、公共工事を発注者から直接受注した建設業者が下請契約を締結する場合は、その金額にかかわらず施工体制台帳を作成し、その写しを発注者へ提出することが必要となります。
つまり、次の場合には施工体制台帳の作成が義務付けられています。
1. 公共工事を直接受注(いわゆる元請け)した建設業者について下請契約がある場合
2. 民間工事を直接受注した特定建設業者について合計額が4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の下請契約がある場合
3. 施工体制台帳の記載内容
施工体制台帳には、作成建設業者に関する事項、作成建設業者が請け負った建設工事に関する事項、建設工事の下請負人に関する事項を記載しなければなりません。
3-1. 作成建設業者に関する事項
- 許可を受けて営む建設業の種類
- 健康保険等の加入状況
3-2. 作成建設業者が請け負った建設工事に関する事項
- 建設工事の名称、内容及び工期
- 発注者との契約年月日、発注者の名称及び住所・営業所の名称及び所在地
- 発注者が監督員を置くときは、監督員の氏名及び権限等
- 作成建設業者が現場代理人を置くときは、現場代理人の氏名及び権限等
- 主任技術者又は監理技術者の氏名・資格・専任の有無
- 監理技術者補佐を置くときは、監理技術者補佐の氏名・資格
- 主任技術者若しくは監理技術者又は監理技術者補佐以外のもので建設工事の施行の技術上の管理をつかさどる者を置くときは、その者の氏名・管理する工事の内容・資格
- 建設工事に従事する者の氏名・生年月日・年齢・職種・社会保険の加入等の状況等(作業員名簿)
- 一号特定技能外国人及び外国人技能実習生の従事の状況
3-3. 建設工事の下請負人に関する事項
- 商号又は名称及び住所
- 建設業者である場合は、許可番号及び請け負った工事に係る許可を受けた建設業の種類
- 健康保険等の加入状況
3-4. 建設工事の下請負契約に関する事項
- 下請契約をした工事の名称、内容及び工期
- 下請契約の締結年月日
- 注文者が監督員を置くときは、監督員の氏名及び権限等
- 下請負人が現場代理人を置くときは、現場代理人の氏名及び権限等
- 下請負人が建設業者であるときは、主任技術者の氏名・資格・専任の有無
- 主任技術者以外のもので建設工事の施行の技術上の管理をつかさどる者を置くときは、その者の氏名・管理する工事の内容・資格
- 建設工事について請負契約を締結した作成建設業者の営業所の名称及び所在地
- 建設工事に従事する者の氏名・生年月日・年齢・職種・社会保険の加入等の状況等(作業員名簿)
- 一号特定技能外国人及び外国人技能実習生の従事の状況
下請負人については、工事に携わるすべての下請負人が対象となります。
施工体制台帳の作成義務があるのは元請業者ですが、各下請負人の協力無くしては作成することはできません。
4. 添付書類
施工体制台帳には、次の書類を添付しなければなりません。
- 発注者との請負契約書の写し
- 一次下請との請負契約書の写し
- 主任技術者又は監理技術者等の資格及び雇用関係を証明する書類
5. 施工体系図
元請業者が、施工体制台帳と合わせて作成しなければならないのが施工体系図です。
施工体系図は、施工体制台帳に基づいて各下請業者の施行分担関係が一目でわかるようにするために作成する図です。
施工体系図は工事期間中、民間工事については現場内の工事関係者が見やすい場所に、公共工事については民間工事については現場内の工事関係者が見やすい場所及び公衆の見やすい場所に掲示しておかなければなりません。
6. 再下請負通知書
施工体制台帳の作成義務対象工事を請け負った下請負人が、さらに他の建設事業者と下請契約を交わした場合は、元請業者に対して再下請負通知書を提出しなければなりません。
再下請負通知書の記載内容は次のとおりです。
- 下請負人の名称及び住所
- 下請負人の健康保険等の加入状況
- 下請負人が注文者と請負契約を締結した建設工事の名称、契約年月日、注文者の名称
- 一号特定技能外国人及び外国人技能実習生の従事の状況
- 再下請負人の名称及び住所
- 再下請負人が建設業者の場合は、その許可番号及び施工に必要な許可業種
- 再下請負人の健康保険等の加入状況
- 下請負人が再下請負人と請負契約を締結した建設工事の名称、内容、工期、契約年月日
- 下請負人がが監督員を置くときは、監督員の氏名及び権限等
- 下請負人が現場代理人を置くときは、現場代理人の氏名及び権限等
- 下請負人が建設業者であるときは、主任技術者の氏名・資格・専任の有無
- 下請負人が主任技術者に加え、主任技術者以外のもので建設工事の施行の技術上の管理をつかさどる者を置くときは、その者の氏名・管理する工事の内容・資格
- 建設工事に従事する者の氏名・生年月日・年齢・職種・社会保険の加入等の状況等(作業員名簿)
- 再下請負人の一号特定技能外国人及び外国人技能実習生の従事の状況
添付書類として、再下請負に関する請負契約書の写しが必要です。
7. 施工体制台帳や施工体系図作成しなかった場合
施工体制台帳又は施工体系図を作成しなかった場合や虚偽の施工体制台帳又は施工体系図を作成した場合には、7日以上の営業停止処分を受けることになります。
8. まとめ
施工体制台帳について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
元請業者や上位の下請業者から作業員名簿や再下請負通知書の作成・提出を求められるのは、元請業者には対象工事について施工体制台帳を作成する義務があるからですね。
記載する項目が多いので作成するのが大変な作業となりますが、重要な書類ですので遅れないように提出しましょう。
ということで、今回はこの辺で
では、また。 See you.
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