こんにちは。
“美し国の行政書士”長谷川です。
建設業においても令和6年4月1日から時間外労働時間の上限規制が適用されるようになりました。
建設業において若手の入職者が少ない原因の一つとして挙げられるのは、長時間労働で週2日の休日も確保できていない事業所が多い点です。
そんな建設業における長時間労働や週休2日の確保を困難としている大きな要因となっているのが工期です。
今回は、そんな建設工事の工期について解説します。
工期と長時間労働との関係
建設工事では、短い工期と長時間労働には相関関係があり、工期が短くなると、時間外労働時間が増える傾向が見られます。
令和6年4月1日から建設業においても時間外労働時間の上限規制が適用されるようになり、上限規制を超える時間外労働は労働基準法違反になってしまいます。
そこで、建設就労者の長時間労働を是正するためには、適正な工期設定を行うことが不可欠となります。
「著しく短い工期」とは
建設業法では、「注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。(第19条の5)」とされています。
それでは、建設工事を施工するための著しく短い期間の工期とはどのようなものでしょうか。
「著しく短い工期」とは、単に定量的に短い期間を指すのではなく、「工期に関する基準」に照らして不適正に短く設定された工期をいいます。
「著しく短い工期」に該当するかの判断は、「工期に関する基準」を踏まえ、見積依頼の際に発注者が受注予定者に示した条件、受注予定者が発注者に提出した見積り等の内容、締結された請負契約の内容、過去の同種類似工事の実績との比較、賃金台帳などを精査し、許可行政庁が請負契約ごとに個別に行います。
災害時の復旧・復興事業を除き、時間外労働の上限規制を上回る違法な時間外労働時間を前提として設定された工期は、例え元請負人と下請負人との間の合意に基づくものであっても「著しく短い工期」と判断されます。
出典:発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(国土交通省 不動産・建設経済局)
建設業法令遵守ガイドライン ー元請負人と下請負人の関係に係る留意点ー(国土交通省 不動産・建設経済局)
建設工事の工期に関する基準
建設工事においては、天候や自然災害のほか建設従業者の休日の確保など工期に影響を与える様々な要因があり、工期の設定に当たっては発注者及び受注者が、これらの要素を考慮して適正な工期を設定する必要があります。
中央建設業審議会が作成した「工期に関する基準」では、工期全般、工程別、分野別の考慮すべき事項が定められています。
工期全般にわたって考慮すべき事項
1. 自然要因
降雨日・降雪日、河川の出水期における作業制限、寒冷・多雪地域における冬期休止期間等
2. 休日・法定外労働時間
法定外労働時間の上限規制を考慮、週休2日の確保
3. イベント
年末年始、夏季休暇、ゴールデンウィーク、地元の催事等に合わせた特別休暇・不稼働日等
4. 制約条件
鉄道近接、航空制限などの立地に係る制約条件等
5. 契約方式
設計段階における受注者(建設業者)の工期設定への関与、分離発注等
6. 関係者との調整
施工前に必要な計画の地元説明会の他、工事中における地元住民や地元団体(漁業組合など)からの理解を得るために要する期間等
7. 行政への申請
新技術や特許工法を指定する場合、その許可がおりるまでに要する時間等
8. 労働・安全衛生
労働安全衛生法等関係法令を遵守し、労働者の安全及び健康を確保するために十分な期間
9. 工期変更
当初契約時の工期の施工が困難な場合、工期の延長等を含め、適切に契約条件の変更等を受発注者間で協議・合意
10. その他
施工時期や施工時間、施工方法等の制限がある場合は、それらを考慮した工期設定等
工程別に考慮すべき事項
1. 準備
資機材調達・人材確保、資機材の管理や周辺設備等
2. 施工
基礎工事、土工事、躯体工事、シールド工事、設備工事、機器製作期間・搬入時期、仕上工事、前面及び周辺道路状況の影響他
3. 後片付け
完了検査、引渡し前の後片付け・清掃等の後片付け期間、原型復旧条件等
分野別に考慮すべき事項
1. 住宅・不動産分野
2. 鉄道分野
3. 電力分野
4. ガス分野
違反した場合はどうなる?
国土交通大臣等の許可行政庁は、「著しく短い工期」で契約を締結した発注者に対して勧告を行うことができ、その勧告に従わない場合は、その旨を公表することができます。
注文者が建設業者で、請負代金が500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の建設工事について「著しく短い工期」で契約を締結した場合は、国土交通大臣等の許可行政庁は、勧告や指示処分を行うことができます。
まとめ
適正な工期設定が行われるには、受発注者間だけではなく、元請事業者・下請事業者間においても対等な立場での合意に基づいて請負契約が締結されなければなりません。
また、建設工事においては、工期に影響を与える様々な要因があり、工期の設定にあたっては発注者及び受注者(下請負人を含む)が、これらの要素を考慮して適正な工期を設定することが必要となります。
建設業の明るい未来のためにも、「著しく短い工期」が是正されることを願って止みません。
ということで、今回はこの辺で
では、また。 See you.
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