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一人親方と偽装一人親方

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こんにちは。

“美し国の行政書士”長谷川です。

最近、建設キャリアアップシステムで技能者登録の依頼を受けました。

その技能者は、現在は一つの建設会社専属の職人として仕事を請け負っており、一人親方としての事業者登録は行わず、自分自身を主たる事業所とし、専属の建設会社を従たる事業所をとして紐づけを行いました。

因みに、その一人親方は、経験年数、資格共に「親方」と呼ぶに相応しい技能レベルでした。

今回は、ご自身が一人親方である方、或いは一人親方と請負契約を交わしている下請事業者に向けて、「一人親方」と「偽装一人親方」について、その違いと「偽装一人親方」と判断された場合のリスクについて解説します。

一人親方とは

一人親方とは、労働者を使用せずに自分一人で或いは自分と家族だけで事業を営んでいる個人事業主のことをいいます。

建設業における一人親方とは、さらに請け負った工事に対し、自ら完成させることができる技能と責任ももって現場の作業に従事する個人事業主をいいます。

一人親方には「親方」という名前がついている通り、技能的には相当年数の実務経験を有し、専門工事技術の他にも職長教育や安全衛生に関する知識を習得していることが期待されています。

建設会社の下で、見習いから始め、経験を積んで一人親方として独立するケースが多いと思います。

そして、一人親方になると、次のようなメリットがあります。

一人親方のメリット

一人親方のメリットとしては、次のことが挙げられます。

  1. 職場にとらわれない自由な働き方ができる。
  2. 仕事をやればやるほど稼ぐことができる。
  3. 自分の腕次第では、単価の高い仕事を請け負うことができ、高収入が期待できる。
  4. 定年がない。

一人親方のデメリット

一人親方には、上記のようなメリットがある一方で、個人事業者なので次のようなデメリットもあります。

  1. 経営者としてのセンスが求められる。
  2. 収入が不安定。
  3. 健康保険料や年金をすべて個人で負担しなければならない。
  4. 確定申告が必要。

偽装一人親方とは

一人親方に対して、偽装一人親方とは、外形的には一人親方として会社と請負契約を結んで現場作業に従事しているが、その実態は会社との雇用契約にある労働者ことをいいます。

つまり、一人親方としてのメリットを受けることができない「労働者」だということです。

なぜ偽装するのか

建設業においては、人手不足が深刻な問題となっております。

建設業の人材確保・育成のための労働環境改善策の一環として、建設業法の改正により2020年から建設会社の社会保険の加入が義務付けられました。

建設業では、かねてから社会保険の加入率が低いことが問題となっていました。

しかし、企業にとっては、労働者として雇い入れることにより社会保険料等の企業負担額が増え、また残業や休日勤務をさせる場合には、割増手当の支払いが必要になるなど、人件費の負担が増加することになります。

企業が雇用契約ではなく、偽装の請負契約を結んで現場作業に従事させているのは、多くの場合には、このような社会保険等の費用負担を免れるためです。

偽装一人親方の判断基準

国土交通省は、元請企業・下請企業に対し「働き方自己診断チェックリスト」を活用した一人親方の働き方の確認を行うことを促しています。

「働き方自己診断チェックリスト」の項目は、次のような内容となっており、該当する項目が多ければ、偽装一人親方と判断され、その企業との雇用契約の締結・社会保険の加入を検討することを求められます。

  1. 発注者からの依頼を断る自由がない。
  2. 日々、会社からの仕事量や配分、進め方の具体的な指示を受けて働く。
  3. 会社から仕事の就業時間を決められている。
  4. 頼まれた仕事を代わりの人に行わせることが認められていない。
  5. 報酬が1日単位や時間単位で決められている。
  6. 仕事で使う材料又は機械・器具等は会社が用意している。
  7. 報酬の額が、同種の業務に従事する正規従業員と比較して、同程度か経費負担を差し引くとそれより低くなる。
  8. 実質的に他者の業務に従事することが制限され、特定の会社の仕事だけに従事している。

国土交通省では、令和8年度以降は、この「働き方自己診断チェックリスト」による確認の負担を軽減するため、実務経験年数が10年以上又はCCUSの技能レベルでレベル3相当以上の技能者が一人親方として取り扱われている場合など、「適正な一人親方の目安」として示すことを検討しています。

偽装一人親方を現場に入場させることはできる?

令和6年4月1日以降、時間外労働規制が建設業においても適用されることになり、現場に入場するのが一人親方なのか或いは実質的に雇用契約が適用される労働者なのかを確認するすることが、元請企業には求められます。

元請企業は、下請企業が次のような一人親方と請負契約を結んでいる場合には、その下請企業に対して雇用契約の締結・社会保険の加入を促すこととされています。

  1. 年齢が10代の一人親方
  2. 経験年数が3年未満の一人親方
  3. 「働き方自己診断チェックリスト」で診断した結果、雇用労働者に当てはまる働き方をしている者

そして、元請企業からの再三の指導にも応じず、改善が見られない場合には、その下請企業は現場入場を認められなくなることも考えられます。

そもそも、国土交通省が定める「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」には、元請企業は、適正な社会保険等に加入していない下請企業とは契約しないことや保険未加入の建設労働者の現場入場を認めないことが定められています。

参考:指導ガイドラインの改定で追加する内容(国土交通省)

まとめ

適正な一人親方の働き方については、魅力的な部分も多々ありますが、「偽装一人親方」は、ご自身にとっては「一人親方のメリット」も無く、現場入場ができなくなるリスクを負った働き方となっております。

「偽装一人親方」と請負契約を交わしている下請事業者にとっても、適正な社会保険等に加入していないということで現場入場を拒否されることがあるかもしれません。

ご自身が「偽装一人親方」に該当しないか、或いは下請契約を交わしている一人親方が「偽装一人親方」に該当しないか、「働き方自己診断チェックリスト」で診断してみてはいかがでしょうか?

ということで、今回はこの辺で

では、また。 See you.

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