建設業許可

建設業者の事業承継

建設業許可

こんにちは。

“美し国の行政書士”長谷川です。

今回は、建設業者の事業承継についてお話したいと思います。

「事業承継」と一言で言ってもいろいろな形態があります。

会社を親族に承継させる「親族内承継」、親族以外の従業員に承継させる「従業員承継」、社外の第三者に承継させる「M&A」、そして個人事業主の相続による承継などがあります。

今回は、建設業者である個人事業主の方で、ご自身が健在のうちに子供に事業を引き継がせたいとお考え方に、事業承継させる方法について説明します。

1. 事業承継の方法

建設業者である個人事業主が、子供に事業を承継させる場合において最もネックになるのが建設業許可の引継ぎです。

個人事業主に与えられた許可は、一身専属的なものであるため、本来であれば他人に引き継ぐことはできません。

しかし、建設就労人口の減少、経営者の高齢化、後継者不足など建設業を取り巻く環境の変化を背景に、2020年の建設業法改正によって制度が緩和されました。

それまでは個人事業主が子供に事業を引き継ぐ場合、事業主が一度許可を廃業し、改めて子供が新規で許可を取得する必要があったため許可期間に空白の期間ができてしまいましたが、この改正より、許可番号もそのままで許可期間も途切れることなく引き継ぐことができるようになりました。

個人事業主の方が健在のうちに子供に事業承継させる方法としては、「法人成りによる承継」、「老齢等の理由による承継」、「認可申請の手続きによらない承継」の3つがあります。

要件や手続きに関しましては、許可行政庁によって異なるところがありますので、ここでは三重県の場合について説明していきます。

2. 法人成りによる事業承継

「法人成りによる事業承継」とは、個人事業主が新たに法人を設立し、承継者である子供をその法人の取締役として就任させます。そして、個人事業主と新設法人の間で事業の譲渡契約を結び、行政庁の認可を受ける方法です。

行政庁の認可が下りると、譲渡契約における譲渡の効力発生日に建設業者としての地位が引き継がれ、許可番号も承継されます。そして、新設法人における許可の有効期間は、承継の日の翌日から起算して5年間となります。

因みに、認可申請の手数料はかかりません。

「法人成りによる事業承継」で行政庁の認可を受けるためにはいくつかの要件があり、それらの要件をすべてクリアしていなければなりません。また、認可申請をする場合には、許可行政庁との事前打ち合わせが必要となります。

2-1. 認可申請の要件

1. 新たに設立した法人の原始定款における発起人が、個人事業主であること

2. 個人事業主と新設法人との間で譲渡契約書が交わされていること

3. 認可申請日において、その譲渡契約における譲渡の効力が未発生であり、効力発生日までの期間が45日以上90日未満であること

4. 新設法人の設立日から、個人事業主が有していた建設業者としての地位を承継する日の前日までの期間において、新設法人は建設工事に関する請負実績がないこと

5. 個人事業主の許可の有効期間満了日の45日前までの申請であること

6. 個人事業主の税務上の廃業届と新設法人の税務上の法人設立届が提出されること(認可通知後、2週間以内に届出の写しを提出すること)

7. 新設法人として建設業の許可要件をすべて満たしていること

2-2. 法人成りによる事業承継の注意点

1. 法人成りによる事業承継は、新たに法人を設立することになりますので、設立費用がかかります。

2. 法人成りすることによって、税務的に節税効果があったり、社会的な信用が向上するなど法人としてのメリットがありますが、社会保険の加入が義務付けられるなど法人を運営する上での費用がかかることになります。

3. 新設法人においては、設立から認可が下りて事業を承継する日の前日までの期間は、営業することができません。

4. 法人は、社会保険の加入が義務付けられていますので、新設法人においてその加入のタイミングを間違えると、個人事業主か新設法人のいずれかにおいて、許可の要件である「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」の常勤性の要件を満たさなくなってしまうため許可の取り消しの対象となってしまいます。

3. 老齢等の理由による事業承継

「老齢等の理由による事業承継」とは、現在の個人事業主が老齢又は病気等の理由により今後、建設業を継続する見込みがない場合に、旧事業主である親と新事業主となる子供との間で事業の譲渡契約を結び、行政庁の認可を受ける方法です。

こちらも法人成りの場合と同様、行政庁の認可が下りると、譲渡契約における譲渡の効力発生日に建設業者としての地位が引き継がれ、許可番号も承継されます。そして、新事業主の許可の有効期間は、承継の日の翌日から起算して5年間となります。

「老齢等の理由による事業承継」で行政庁の認可を受けるためにはいくつかの要件があり、それらの要件をすべてクリアしていなければなりません。 また、認可申請をする場合には、許可行政庁との事前打ち合わせが必要となります。

3-1. 認可申請の要件

1. 承継の事由が、旧事業主の老齢、病気等によるものであること(老齢については、何歳以上というような制限はありません。病気等については、心身の故障による場合でいずれも今後、建設業を継続する見込みがないものであること)

2. 旧事業主と新事業主との間で譲渡契約書が交わされていること

3. 認可申請日において、その譲渡契約における譲渡の効力が未発生であり、効力発生日までの期間が45日以上90日未満であること

4. 新事業主は、旧事業主の親族又は旧事業主と直近まで雇用関係にあった者であり、要件を満たすものが複数いる場合は、他の者から同意を得ていることが確認できること(旧事業主の親族に限らず、直近まで旧事業主の従業員であった者も対象になります)

5. 屋号又は称号が承継の前後で同じであること

6. 主たる営業所の所在地が承継の前後で同じであること

7. 旧事業主の許可の有効期間満了日の45日前までの申請であること

8. 旧事業主の税務上の廃業届と新事業主の税務上の開業届が提出されること(認可通知後、2週間以内に届出の写しを提出すること)

9. 新事業主として建設業の許可要件をすべて満たしていること

4. 認可申請の手続きによらない承継

上記の認可申請の手続きによらない事業承継の方法もあります。

新設法人又は新事業主が、旧事業主との間で事業承継にかかる同意書を交わしたうえで、新規で許可申請をする方法です。

この場合、新規許可申請となりますので、許可番号は引き継がれませんし、新規許可申請の手数料もかかります

しかし、事前に承継の手続きをする旨を許可行政庁に申し出ておけば、無許可期間が生じないように配慮されますし、経営事項審査を受審している場合は、受審に際して営業年数、完成工事高の実績等を引き継ぐことができます

この方法により事業承継するには、新規申請のあたり一定の要件を満たしていなければなりません。

5. 新規申請の要件

5-1. 法人成りによる場合

1. 旧事業主が新設法人の常勤の役員であること

2. 旧事業主が、新設法人の最大の株主又は出資者であること

3. 新設法人の設立日から、許可を受ける日の前日までの期間において、新設法人は建設工事に関する請負実績がないこと

4. 主たる営業所の所在地が旧事業主と新設法人で同じであること

5. 新規申請における新設法人の経営業務の管理責任者は、旧事業主の経営業務の管理責任者であること

6. 旧事業主の建設業許可の有効期限満了の日の30日前までの申請であること

7. 新設法人として建設業の許可要件をすべて満たしていること

5-2. 老齢化等の理由による場合

1. 承継の事由が、旧事業主の老齢、病気等によるものであること

2. 新事業主は、旧事業主の配偶者又は子・親であり、要件を満たすものが複数いる場合は、他の者から同意を得ていることが確認できること

3. 屋号又は称号が承継の前後で同じであること

4. 主たる営業所の所在地が承継の前後で同じであること

5. 旧事業主の建設業許可の有効期限満了の日の30日前までの申請であること

6. 新事業主として建設業の許可要件をすべて満たしていること 

6. まとめ

・個人事業主が、自分が健在のうちに子供に事業を引き継ぐ方法として、「法人成りによる認可申請」「老齢等の理由による認可申請」「認可申請によらない新規申請」がある。

・認可申請の場合は、旧事業主の許可番号を引き継ぐことができる。

・いずれの方法でも、許可期間が途切れることなく引き継ぐことができる。

・いずれの方法でも経営事項審査を受審する場合、受審に際して営業年数、完成工事高の実績等を引き継ぐことができる。

・新規申請による承継に限らず、認可申請の承継人も建設業許可の要件を満たしていなければならない。

承継人の許可の要件については、次回説明したいと思います。

ということで、今回はこの辺で

では、また。 See you.

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