こんにちは。
“美し国の行政書士”長谷川です。
建設業においては人材不足が深刻となっています。
若手が建設業を敬遠する理由としては、低賃金・長時間労働が挙げられます。
建設工事を請け負う下請業者にとっては、「契約金額が安くて儲からないから賃金も上げられないなぁ」ってこともあるでしょう。
一方、下請契約の発注者にとっては、請負代金は安い方が儲かるからいいですよね。
でも、その請負代金が「不当に低い請負代金」になっていませんか?
建設業法では、「不当に低い請負代金」による契約は禁止されています。
今回は、「不当に低い請負代金」とは何か?また、どのような場合に、「不当に低い請負代金」に該当するのか事例を交えて解説します。
「不当に低い請負代金」とは
「不当に低い請負代金」とは、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、受注者と締結した請負契約において、その注文した工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額の請負代金のことをいいます。
取引上の地位の不当利用とは
発注者が、受注者にとって大口の取引先であるなど取引の依存度が高い場合において、その地位を利用して経済的に著しく不利益な要請を受注者に強いる取引は、取引上の地位の不当利用に当たる可能性が高いです。
請負代金の決定に当たり、発注者と受注者の間で十分な協議が行われたかどうかが判断の基準になります。
「通常必要と認められる原価」
「通常必要と認められる原価」とは、その工事の施工地域においてその工事を施工するために一般的に必要と認められる直接工事費、共通仮設費及び現場管理費からなる間接工事費、一般管理費の合計額のことをいいます。
受注者の実行予算や外注先・材料仕入先との取引状況、その施工地域における同種工事の請負金額の実例などを考慮して判断されます。
違反となるおそれがある工事事例
国土交通省が定める「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」に不当に低い発注金額の「建設業法違反となるおそれがある工事事例」として次のものを挙げています。
① 発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者との協議を行うことなく、受注者による見積額を大幅に下回る額で建設工事の請負契約を締結した場合
② 発注者が、契約を締結しない場合には今後の取引において不利な取扱いをする可能性がある旨を示唆して、受注者との従来の取引価格を大幅に下回る額で、建設工事の請負契約を締結した場合
③ 発注者が、請負代金の増額に応じることなく、受注者に対し追加工事を施工させた場合
④ 発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になり、工事費用が増加したにもかかわらず、発注者が請負代金の増額に応じない場合
⑤ 発注者が、契約後に、取り決めた代金を一方的に減額した場合
発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第5版)不当に低い発注金額(建設業法第19条の3)
上記の工事事例の他にも、次のような行為も不当に低い発注金額として建設業法違反となるおそれがあります。
工事請負契約約款が受注者に過大な義務を課す内容になっている場合
- 発注者の責めに帰すべき事由により生じた損についても受注者に負担させること
- 工事の施工に伴い通常避けることができない騒音等の第三者への損害についても受注者に負担させること
- 民法や住宅品確法に定める期間を大幅に超えて、長期間の瑕疵担保期間を設けること
- 過度なアフターサービス、例えば、経年劣化等に起因する不具合についてのアフターサービスなどを受注者に負担させること
契約外で受注者に過度な負担を課す場合
- 販売促進への協力など工事請負契約の内容にない業務を受注者に無償で求めること
- 設計図書と工事現場の状況が異なっていた場合に、設計変更の作業を受注者に無償で協力させること
以上のような事例において、「通常必要と認められる原価」に満たない金額の請負代金と判断される場合は、建設業法違反となる可能性があります。
参考:発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(国土交通省)
まとめ
- 発注者が取引上の優越的な地位を利用している。
- 「通常必要と認められる原価」に満たない金額の請負代金である。
- 「通常必要と認められる原価」に満たない金額の請負代金にあたるかどうかは、発注者と受注者間の契約状況、受注者の取引状況やその施工地域における同種工事の請負金額の実例などを考慮して判断される。
以上の条件を満たす場合は、建設業法の「不当に低い請負代金の禁止」に違反するおそれがあります。
ということで、今回はこの辺で
では、また。 See you.
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