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手形サイトが60日以内に

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こんにちは。

“美し国の行政書士”長谷川です。

公正取引委員会と中小企業庁から手形サイトの短縮に関する指導基準の変更が公表されました。

ということで、今回は手形サイトの短縮の内容と指導の対象となる事業者について解説します。

1. 手形サイトの短縮

2. 「割引困難な手形」とは

「割引困難な手形」とは、手形を下請代金の支払手段として用いる場合に、下請事業者の利益を保護する観点から、業界の商慣行、金融情勢等を総合的に勘案して、ほぼ妥当と認められる手形期間を超え、一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形として、繊維業では手形期間が90日、その他の業種は120日を超える長期の手形をいいます。

令和6年11月1日以降に交付される手形については、業種を問わず60日を超えるものがこれに該当します。

3. 下請法の指導基準

今回の手形サイトの短縮で行政指導の対象となるのは誰かというと、

公正取引委員会及び中小企業庁が関連事業者団体へ通知した要請文によると次のようになっています。

令和6年11月1日以降、親事業者が下請代金の支払手段として、手形期間が60日を超える長期の手形を交付した場合、下請法の割引困難な手形に該当するおそれがあるとして、その親事業者に対し指導されたい。

出典:別添1 手形等が下請代金の支払い手段として用いられる場合の指導基準の変更について(公正取引委員会事務総局官房審議官)より抜粋

【サプライチェーン全体での支払手段の適正化について】

  1. サイトが60日を超える手形等を下請法の割引困難な手形に該当するおそれがあるものとして指導の対象とする運用が、令和6年11月1日から始まること。
  2. ファクタリング等の一括決済方式については、サイトを60日以内とすることに加え、引き続き、一括決済方式への加入は下請事業者の自由な意思によること並びに親事業者、下請事業者及び金融機関の間の三者契約によることを徹底する。
  3. 下請法対象外の取引についても、手形等のサイトを60日以内に短縮する、代金の支払をできる限り現金によるものとするなど、サプライチェーン全体での支払手段の適正化に努めること。とりわけ建設工事、大型機器の製造など発注から納品まで期間が長期にわたる取引においては、発注者は支払手段の適正化とともに、前払い比率、期中払い比率をできる限り高めるなど支払い条件の改善に努めること。
出典:別紙1 手形等のサイトの短縮への対応について(20240423中庁第4号 公取企第153号)より抜粋

ということで、今回の手形サイトの短縮で指導の対象となるのは、下請法上の親事業者であり、下請法対象外の取引に関しては努力義務ということになります。

4. 下請法に規定する親事業者と下請事業者

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律です。

下請法では、取引当事者の資本金又は出資金の総額の区分と取引の内容により適用の対象となる下請取引を定めています。

4-1. 対象となる取引

1. 製造委託

物品を販売し、または製造を請け負っている事業者が、企画、品質、形状、デザイン、ブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託することをいいます。ここでいう「物品」とは動産のことを意味しており、家屋などの建築物は対象に含まれません。

2. 修理委託

物品の修理を請け負っている事業者がその修理を他の事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することなどをいいます。

3. 情報成果物作成委託

ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいいます。情報成果物の代表的な例としては、次のものを挙げることができ、物品の付属品・内蔵部品、物品の設計・デザインに係わる作成物全般を含んでいます。

 例:プログラム :映像や音声、音響から構成されるもの :文字、図形、記号などから構成されるもの

4. 役務提供委託

運送やビルメンテナンスをはじめ、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することをいいます。ただし、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は役務には含まれません。

出典:ポイント解説下請法(公正取引委員会・中小企業庁)

4-2. 資本金区分

1. 委託取引の内容が ①物品の製造 ②物品の修理 ③プログラムの作成 ④運送・物品の倉庫保管・情報処理 の場合

 ・自社(親事業者)の資本金が3億円超、下請事業者が資本金3億円以下の会社や個人事業者

 ・自社(親事業者)の資本金が1千万円超 3億円以下、下請事業者が資本金1千万円以下の会社や個人事業者

2. 委託取引の内容が ①プログラム以外の情報成果物の作成 ②運送・物品の倉庫保管・情報処理以外の役務の提供 の場合

 ・自社(親事業者)の資本金が5千万円超、下請事業者が資本金5千万円以下の会社や個人事業者

 ・自社(親事業者)の資本金が1千万円超 5千万円以下、下請事業者が資本金1千万円以下の会社や個人事業者

 出典:ポイント解説下請法(公正取引委員会・中小企業庁)

表にまとめると次のようになります。

委託取引の内容親事業者下請事業者
1. 物品の製造

2. 物品の修理

3. プログラムの作成

4. 運送・物品の倉庫保管・情報処理

資本金3億円超
資本金3億円以下の会社や個人事業者
資本金1千万円超 3億円以下資本金1千万円以下の会社や個人事業者
1. プログラム以外の情報成果物の作成

2. 運送・物品の倉庫保管・情報処理以外の役務の提供
資本金5千万円超資本金5千万円以下の会社・個人事業者
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下の会社・個人事業者

したがって、資本金1千万円以下の会社は、下請法の対象となる親事業者とはなりません。

4. 建設業法の対応

下請法に規定する下請取引には、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は対象外となっていますが、建設工事については建設業法において、下請代金の支払いに関して下請法と同様に「割引困難な手形」の支払いに関する規定(建設業法第24条の6第3項)があり、こちらに関しては、国土交通省不動産・建設経済局長が次のように通知しています。

1. 本年11月1日以降、特定建設業者は、自らが注文者となった建設工事の請負契約に係る下請代金の支払いにおいて、当該支払を受ける請負人が資本金4千万円未満の一般建設業の許可業者である場合に、60日を超える手形期間の手形を交付したときは、「割引困難な手形」を交付したものとして、建設業法第24条の6第3項の規定に違反するおそれがあること

2. 建設業法第24条の6第3項の適用ない取引も含め、手形期間を60日以内に短縮する、下請代金の支払いをできる限り現金とするなど、サプライチェーン全体で支払い手段の適正化に努めること

出典:別紙2 国不建推第10号(手形期間の短縮について)001741750.pdf (mlit.go.jp)

対象となる請負契約に関して60日を超える手形期間の手形を交付したときは、建設業法違反になるおそれがあり、規定の対象外の取引については努力義務となっております。

5. まとめ

今回の手形サイトの短縮は、企業の資金繰りに大きな影響を与えることになりそうですね。

メリットを受ける事業所もあれば、シワ寄せを受ける事業所もありそうです。

いずれにしても、指導の対象とならない事業者を含め、サプライチェーン全体での取り組みが不可欠ということになりますね。

ということで、今回はこの辺で

では、また。 See you.

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