こんにちは。
“美し国の行政書士”長谷川です。
建設事業者の方、建設工事の請負契約書をちゃんと交わしていますか?
「契約は、口約束でも有効だから」と契約書を交わさない事業者の方もいらっしゃるのではないかと思います。
今回は、建設業を営む事業者の方に「本当に請負契約書は必要か?」という疑問について解説します。
1. 一般法と特別法
「契約の成立と方式」に関して、民法では次のように規定されています。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
民法第522条第1項
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
民法第522条第2項
民法では、本人の申込みと相手方の承諾があれば、特に書面を交わさなくても契約は成立します。
つまり、「契約は、口約束でも有効」です。
しかし、これは「民法」での規定です。
1-1. 一般法
一般法とは、人、場所、事項その他範囲を限定せずに、幅広く一般的に適用される法律です。
民法は、この一般法に該当します。
1-2. 特別法
一般法に対して、特定の人、場所、事項について適用される法律が特別法です。
「建設業を営む者」という「特定の人」について適用される法律として「建設業法」があります。
「建設業法」は特別法に該当します。
1-3. 特別法は一般法に優先する
それでは、ある事柄について一般法と特別法で異なる規定を定めている場合はどうなるのでしょうか。
一般法と特別法が競合する場合は、特別法が優先的に適用されることになります。
つまり、契約に関して「民法」と「建設業法」で異なる規定がある場合は、「建設業法」の規定が優先されるということです。
2. 「建設業法」に定める建設工事の請負契約
「建設業法」では、請負契約に関して次のように定めています。
(建設工事の請負契約の原則)
建設工事の請負工事の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない。
建設業法第18条
(建設工事の請負契約の内容)
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印して相互に交付しなければならない。
建設業法第19条第1項
建設業法では、請負契約に関して書面による契約を求めており、さらにその契約書に記載すべき事項についても規定されています。
口約束ではダメなのです。
2-1. 契約書に記載しなければならない15項目
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事着手の時期及び工事完成の時期
- 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
- 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
- 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
- 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
- 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
- 工事の施行により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
- 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
- 注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
- 工事完成後における請負代金の支払いの時期及び方法
- 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
2-2. 建設リサイクル法の対象となる建設工事
特定建設資材(コンクリート、コンクリートと鉄からなる建設資材、木材、アスファルト・コンクリート)が使われる建築物等の建設工事で次に掲げる工事を「建設リサイクル法対象建設工事」といいます。
- 床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事
- 床面積の合計が500㎡以上の建築物の新築・増築工事
- 請負代金の額が1億円以上の建築物の修繕・模様替等工事
- 請負代金の額が500万円以上の建築物以外の工作物の工事(土木工事等)
建設リサイクル法対象建設工事については、上記の15項目に加え次の4項目を書面で記載しなければなりません。
- 分別解体の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化するための施設の名称及び所在地
- 再資源化等に要する費用
3. 請負契約書の方法
請負契約書の作成方法としては、次の3つの方法があります。
いずれの方法であっても、前述の15項目に掲げる事項については必ず記載しなければなりません。
3-1. 請負契約書を交わす方法
工事毎に15項目に掲げる事項を記載した個別契約書を作成し、当事者の署名又は記名押印をしたものを相互に交付する方法
3-2. 基本契約書を交わし、注文書・請書を交換する方法
基本契約書には、15項目のうち5~15に掲げる事項を記載し、当事者の署名又は記名押印をしたものを相互に交付する。
注文書・請書には、15項目のうち1~4に掲げる事項その他必要な事項を記載し、さらに注文書・請書の記載事項以外は基本契約書による旨を明記したうえ、注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印をしたものを交換する方法
3-3. 注文書・請書の交換のみによる方法
15項目のうち5~15に掲げる事項を記載した基本契約約款を作成し、注文書・請書のそれぞれに添付する。
注文書・請書には、15項目のうち1~4に掲げる事項その他必要な事項を記載し、さらに注文書・請書の記載事項以外は基本契約約款による旨を明記したうえ、注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印をしたものを交換する方法
基本契約約款については、国土交通省の「建設工事標準請負契約約款について」からひな形をダウンロードすることができます。
4. まとめ
「建設工事に請負契約書は必要か?」というテーマで解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
建設業法では、建設工事の請負契約の当事者間における紛争を防止するため書面による請負契約の締結を義務付けています。
建設業許可の有無にかかわらず適用されますから、契約書等を作成していないという方は早速作成して下さいね。
ということで、今回はこの辺で
では、また。 See you.
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