こんにちは。
“美し国の行政書士”長谷川です。
毎日暑い日が続いていますね。
2023年度から「建設キャリアアップシステム」の登録が原則義務化されます。
義務化されるので登録しなければいけないのか?とお悩みの事業者や技能者の方もいらっしゃると思います。
そこで、今回は「建設キャリアアップシステム(CCUS)」について説明します。
1.「建設キャリアアップシステム」って何?
建設業では、建設技能者の高齢化が進み、数年後には高齢技能者は離職し、それを補う若手技能者の数が不足することが予想されています。
若手の入職者が少ない原因としては、建設技能者は製造業と比べると賃金水準が低い。長時間労働で週2日の休日も確保できていない事業所が多い点が挙げられます。
そこで、若手技能者の確保と育成のため技能者が技能や経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して2019年から運用が開始されたのが「建設キャリアアップシステム」です。
「建設キャリアアップシステム」は、建設業で働く技能者一人ひとりの就業実績や資格、社会保険の加入状況を登録・蓄積することで、技能者の公正な評価による処遇の改善、工事の品質向上、現場管理の効率化につなげるシステムです。
そして、2023年度から「あらゆる工事でCCUSを完全実施」を目指し、国・業界が一体となって推進するということで、登録が原則義務化されます。
2.「建設キャリアアップシステム」を利用するには?
「建設キャリアアップシステム」を利用するには、まずはシステムに登録しなければなりません。
登録には、「技能者登録」と「事業者登録」があります。
さらに、現場で運用するためには、元請事業者は現場登録が、下請事業者は施工体制登録をする必要があります。
2-1 技能者登録
一人ひとりの技能者が、氏名、住所などの本人情報、保有資格、社会保険加入状況、研修受講履歴などをシステムに登録します。
登録には、簡略型と詳細型があり、詳細型の方が登録する項目が多くなります。
簡略型:本人情報・所属事業者ID・所属事業所名・職種・社会保険加入状況・建退共加入状況等
詳細型:簡略型に加え、保有資格・研修受講履歴・表彰・健康診断受診歴等
登録すると、各技能者にキャリアアップカード(ICカード)が交付されることになります。
そして、そのICカードを各現場に入場の際、元請事業者が設置したカードリーダーで読み取ることで、誰が、いつ、どこの現場で、どのような作業に従事したのかが就業実績としてシステムに記録・蓄積されていきます。
2-2 事業者登録
元請事業者、下請事業者にかかわらず、商号、所在地、建設業許可情報、社会保険加入状況などの事業者情報を登録します。
2-3 現場・契約情報登録
CCUSを現場で運用するには、元請事業者は、工事の規模・工種にかかわらず、現場名・組織情報・現場管理者・連絡先・就業履歴蓄積期間など10項目の現場情報を登録しなければなりません。
この他、契約工事名称・発注者名・請負金額・工機などの契約情報と工事種類・工事内容などの工事情報の登録がありますが、こちらの登録については任意となっています。
登録が完了すると、現場IDが発行されます。
2-4 施工体制登録
下請事業者は、元請事業者が登録した現場・契約情報に対して施工体制を登録します。
登録に当たっては、技能者の職種や現場での立場や作業内容を登録します。
施工体制登録の方法には、「自社登録」と「代理手続き登録」があります。
「自社登録」は直近上位事業者から下位事業者へCCUS上で施工体制登録を「要請」し、下位事業者が「承認」して事業者を登録し、その登録事業者が自社で施工体制を登録する方法です。
一方の「代理手続き登録」は、事前に登録事業者間で代理手続きについて合意をすることで、次の現場から「要請」「承認」の手続きをすることなく、上位事業者が下位事業者の施工体制を代理で登録することができる方法です。
3.「建設キャリアアップシステム」導入のメリットは?
「建設キャリアアップシステム」導入のメリットとして、大きく二つに分けることができます。
一つ目は登録技能者のメリット、もう一つは登録事業者のメリットです。
3-1 登録技能者のメリット
賃金アップが期待できる
建設技能者は、現場によって就業場所が異なるので、一人ひとりの能力を統一された基準で評価する仕組みがなかったためスキルに合った処遇を受けることができませんでしたが、CCUSの登録によって自らの資格や就業履歴が証明することができるので、公正な評価による技能レベルに応じた処遇を受けられ、賃金アップが期待できる。
正しく退職金を受け取れる
建設業退職金共済(建退共)制度と連携しているので、蓄積された情報に基づいた正しい退職金を受け取ることができる。
転職の際にも有利
転職する際にも自分のキャリアを証明することができるので有利である。
3-2 登録事業者のメリット
現場管理の効率化が図れる
- 社会保険加入状況等の確認の効率化
現場に入場する技能者の社会保険加入状況がシステムにより確認することが可能となる。
2. 書類作成等の事務作業の効率化
工事の実施に当たっては、施工体制台帳や作業員名簿の作成等の作業が簡素化され、ミスも少なくなり、事務負担が軽減される。
3. 建退共関係事務の効率化
CCUSで蓄積された技能者の就業履歴を建退共制度の電子申請方式によってデータ連携することが可能となり、データ作成作業や掛金納付のための証紙貼付作業がなくなり、事務作業が効率化される。
取引先からの信頼が得やすい
事業者情報や自社が雇用する技能者の数や保有資格、就業実績等の技能者情報を閲覧することができるので、企業の施工能力が「見える化」され、社会保険加入状況等も明らかになるので、取引先からの信頼が得やすくなり、受注機会の拡大が期待できる。
経営事項審査において加点となる
公共工事への入札を希望する事業者にとって、CCUS登録は経営事項審査の加点項目となっている。
・能力評価基準において、レベル3・レベル4の技能者を雇用する事業所には加点
・令和5年8月14日以降の審査基準日以前の1年間に、軽微な工事等を除く、国内におけるすべての建設工事又は公共工事において、CCUSを利用して工事を請負った元請事業者には加点
採用面で優遇される
ハローワーク等と連携して、建設業への入転職を希望する求職者に対して、CCUS登録企業への応募を勧奨している。
4.登録しないとどうなる?
2023年度からCCUSの登録が原則義務化されますが、あくまでも原則ですので「登録しない」という選択もありです。
しかし、この制度の目的の一つとして、「技術者を雇用し、育成する企業が伸びていける業界環境をつくる」という目的があります。
つまり、CCUSに登録していない事業者は、元請事業者からも技能者からも選ばれなくなるということです。
施工体制を登録するためには、現場に関わるすべての事業者がCCUSに登録する必要があります。
未登録の事業者がある場合は、その事業者に所属する技能者はもちろんのこと、その事業者の下位事業所に所属する技能者の就業履歴も蓄積されません。
大手ゼネコンでは、CCUS登録率100%を方針として打ち出しており、すべての下請け業者に対して登録を要請しています。
近い将来、ゼネコンや公共工事の現場に限らず、すべての現場においてCCUS未登録の技能者は入場できなくなると考えられます。
5.「建設キャリアアップシステム」導入にかかる費用は?
「建設キャリアアップシステム」を利用するためには次のような費用がかかります。
5-1 技能者登録料
技能者登録料は、建設キャリアアップカードの発行費用であり、カードの有効期間は発行日から9年を経過後の最初の誕生日までとなります。
申請時において60歳以上の方の有効期間は、14年経過後の最初の誕生日となります。
技能者の登録申請には、インターネットによる方法と認定登録機関へ申請書類を提出する方法があります。
申請方法 | 登録料(税込) |
インターネット | 1. 簡略型 2,500円 |
2. 詳細型 4,900円 | |
認定登録機関 | 詳細型 4,900円 |
5-2 事業者登録料
事業者登録料は、事業者がシステムを使用するために必要な費用です。登録の有効期間は5年間で、登録が完了した日から5年後の登録月末まで有効です。
登録料は、資本金の額に応じて次のように金額が決められています。
資本金 | 登録料(税込) |
一人親方 | 0円 |
500万円未満(個人事業主を含む) | 6,000円 |
500万円以上 1,000万円未満 | 12,000円 |
1,000万円以上 2,000万円未満 | 24,000円 |
2,000万円以上 5,000万円未満 | 48,000円 |
5,000万円以上 1億円未満 | 60,000円 |
1億円以上 3億円未満 | 120,000円 |
3億円以上 10億円未満 | 240,000円 |
10億円以上 50億円未満 | 480,000円 |
50億円以上 100億円未満 | 600,000円 |
100億円以上 500億円未満 | 1,200,000円 |
500億円以上 | 2,400,000円 |
5-3 管理者ID利用料
事業者がこのシステムを使って事業者情報などを管理するために必要な管理者IDの利用料で、毎年必要となります。
1IDあたり 11,400円(税込)/年
一人親方は、2,400円となります。
5-4 現場利用料
元請事業者が、このシステムで現場・契約情報を登録し、その現場において技能者の就業履歴を登録するための利用料です。
技能者1人、1日、1現場あたり 10円(税込)
6.まとめ
「建設キャリアアップシステム」は、技能者にとっても、事業者にとってもメリットがあるシステムです。
ただ、システムの登録に費用がかかるのと登録手続きが面倒だというデメリットもありますが・・・。
国と業界が一体となって積極的に推し進めている仕組みなので、やがて完全義務化されるのではないかと思います。
登録しようかどうか迷っている事業者の方は、新たな受注機会の増加が期待できるし、優秀な技能者を確保するためにも早期に登録した方が得策かもしれませんね。
ということで、今回はこの辺で
では、また。 See you.
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